- 生没
- 1457年頃~1504年4月18日
- 出身
- プラート
- 没地
- フィレンツェ
- 父
- フィリッポ・リッピ
- 母
- ルクレツィア・ブーティ
- 師
- ボッティチェッリ
概要
フィリッピーノ・リッピは、イタリアの画家。
作品
年表
1457年頃
プラートにて、生。
1469年10月9日
父フィリッポ・リッピ、死。
1469年頃
1475年頃
フィレンツェで独立し、画家として活動を開始。
1475~1480年頃
「トビアスと天使」を制作。
1482~1486年
「聖ベルナルドゥスの幻視」を制作。
1487年
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会フィリッポ・ストロッツィ礼拝堂のフレスコ画に着手。
1488年~1493年
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会フィリッポ・ストロッツィ礼拝堂のフレスコ画を中断し、ローマに向かう。
古代遺跡やメロッツォ・ダ・フォルリ、ピントゥリッキオのフレスコ画を研究。
1488年8月27日
この日以前にローマに到着。
サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂のフレスコ画に着手。
1493年
教皇アレクサンデル6世が、フレスコ画が完成したサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂を訪れる。
1493~1496年
「東方三博士の礼拝」を制作。
1497~1502年
サント・スピリト教会のストロッツィ礼拝堂のフレスコ画を制作。
1502年
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会フィリッポ・ストロッツィ礼拝堂のフレスコ画を完成。
1503年
ピストイア大聖堂で「聖ステファノと聖ジョヴァンニーノ」を制作。
1504年1月25日
ミケランジェロの「ダヴィデ像」完成し、この日、その設置場所を決定するため、自身を含む、ボッティチェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ペルジーノ、ジュリアーノ・ダ・サンガッロ、アントーニオ・ダ・サンガッロ・イル・ヴェッキオなどによる設置委員会開かれる。
1504年4月18日
フィレンツェにて、死。
クマエ、リビア、ティブル、デルポイの巫女 Sibilla Cumana, Libica, Tiburtina e Delfica
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ又はラッファエッリーノ・デル・ガルボ
- 制作
- 1489~1491年
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂
概要
「クマエ、リビア、ティブル、デルポイの巫女」は、フィリッピーノ・リッピ又はラッファエッリーノ・デル・ガルボ作の絵画、天井画。

中央にはカラーファ家の紋章がメダリオン内に描かれ、その装飾はリブに沿って続いている。 この装飾は、ロレンツォ・イル・マニーフィコの標章であるダイヤモンドの輪が交互に配置され、書物や椰子と組み合わされている。これは、ナポリ王国と同盟したフィレンツェ共和国、メディチ家への感謝の意を示すものと解釈されている。その装飾で区切られた部分に、クマエ、リビア、ティブル、デルポイの巫女が描かれ、単色の天使が支えるローマ風の銘板にそれぞれの名前が記されている。

彼女たちは預言者と同じく知恵の象徴として、トマス・アクイナスの著作からの一節が書かれた巻物を持ち、天使たちと共に書物を読んだり書いたりしている。オリヴィエーロ・カラーファ枢機卿の学問への関心を示している。クマエの巫女は片方の胸が半ば露出した姿であるのは、中世神学の考えに基づいたもので、巫女の予言が人類にとって、乳児にとっての母乳と同じ価値を持つとされていたからである。

デルポイの巫女の脚を交差させた姿勢や、クマエの巫女の衣の襞と露出した胸、ティブルの巫女の思索的な姿勢は、古代彫刻から着想を得たものと考えられている。

これらの複雑な姿勢や流れるような衣の襞、絡み合う巻物の動きは、フィリッピーノ特有の独特な線の流れを生み出し、古典的な自然主義を意図的に避けた、緊張感のある躍動と高い表現力をもたらしている。
同時期のフィレンツェでは、ドメニコ・ギルランダイオのサッセッティ礼拝堂の巫女が依然として壁画のような正面構図であるのに対して、フィリッピーノは、フィレンツェの画家として初めて下から見上げる視点を採用した。この遠近法はまだ発展途上だったが、サンティ・アポストリ聖堂のメロッツォ・ダ・フォルリによる「キリストの昇天」の影響を受けたものと考えられる。
外部リンク
聖母被昇天 Assunzione di Maria
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ
- 制作
- 1488~1493年
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂
概要
「聖母被昇天」は、フィリッピーノ・リッピ作の絵画、壁画。カラーファ礼拝堂の後壁は、フレスコ画で描かれた擬似的な祭壇画の受胎告知と、漆喰の額縁、その両側及び上部に描かれた聖母被昇天で装飾されている。

全体の構図は、白黒のカンデラブラ装飾が施された柱によって支えられた大きな半円状の架構で囲まれ、柱の上にはカラーファ家の紋章を掲げるプットーが配されている。

この装飾の中には、特に注目すべき題材として、ローマ船の船首が描かれ、その上にはオリーヴの小枝があしらわれている。これは、発注者のオリヴィエーロ・カラーファ枢機卿の名Olivieroにちなみ、彼がオスマン帝国軍に対して挙げた海戦での勝利を象徴している。この船の図像は、かつてサン・ロレンツォ・フオーリ・レ・ムーラ聖堂にあった大理石の浮彫(現カピトリーノ美術館所蔵)を基にしている。この浮彫は、古代ローマの伝統に従い、船の各部分が人体の器官に対応することを示している大理石の浮彫から模写されたものである。そのため、船首には目が描かれている。

別表記
Assumption of the Virgin
題材
外部リンク
受胎告知とオリヴィエーロ・カラーファ枢機卿 Annunciazione con il cardinale Oliviero Carafa
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ
- 制作
- 1488~1493年
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂
概要
「受胎告知とオリヴィエーロ・カラーファ枢機卿」は、フィリッピーノ・リッピ作の絵画、壁画。「聖母被昇天」の前の額縁に収められた板絵のように見えるが、実際にはフレスコ画であり、彫刻された木材を模した額縁は金箔を施した漆喰で作られている。

受胎告知の場面と共に、寄進者であるオリヴィエーロ・カラーファ枢機卿が跪き、その肩に聖トマス・アクイナスが手を置いて、枢機卿をマリアに紹介している。受胎告知の場面に寄進者が登場するのは珍しくないが、この作品ではマリアが2つの異なる役割を同時に担っている点が極めて独特である。

マリアは頭を左に向け、ガブリエルを見つめている。天使は空中に舞い上がるように描かれ、その後ろには聖霊の象徴である鳩が光の光線とともに降り注いでいる。しかし、マリアの身体は右側に向いており、トマス・アクイナスとオリヴィエーロ・カラーファに注意を向け、右手を挙げて枢機卿を祝福している。通常ではガブリエルとマリアのやりとりが中心となるが、本作では、枢機卿がマリアと並び、さらには彼女の関心を受胎告知の神聖な出来事から逸らしているかのように見える点が非常に特徴的である。
場面は室内に設定されており、マリアは本が積まれた書見台のそばで椅子に跪いている。また、カーテンが少し開かれた壁の上部の棚には静物画のような要素が描かれている。そこには、本や硝子の瓶(caraffa)が置かれている。この瓶は聖母の純潔を象徴する透き通った清らかさを表している。さらに、その瓶にはオリーヴの小枝が添えられており、これはOliviero Caraf(f)aという枢機卿の名前に由来する言葉遊びになっている。
題材
マリア
ガブリエル
オリヴィエーロ・カラーファ
トマス・アクイナス
別表記
St. Thomas Aquinas Presents Cardinal Carafa to Our Lady of the Annunciation
外部リンク
磔刑像の奇跡 Miracolo del Crocifisso che parlò a San Tommaso
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ
- 制作
- 1488~1493年
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂
概要
「磔刑像の奇跡」は、フィリッピーノ・リッピ作の絵画、壁画。

カラーファ礼拝堂の右側上部の半円形には、トマス・アクイナスの生涯に関する複数の出来事が描かれている。左側には室内を舞台とした「書物の奇跡」があり、十字架上のイエス・キリストが聖人に向かって、「トマスよ、よく私について書いてくれた(Bene scripsisti de me Thoma)」とその業績を称賛している場面である。この奇跡的な出現に驚き、1人の修道士が恐れて扉から逃げ出している。

さらに、純潔の象徴である白百合を手にした天使たちの姿や、1人の天使がトマス・アクイナスの外套をめくり、腰に結ばれた帯を見せている描写は、聖人の生涯におけるもう1つの出来事、すなわち、家族が修道生活を辞めさせようと娼婦を差し向けた際、トマス・アクイナスが誘惑を退けたことを称え、2人の天使が現れて彼の腰に貞潔の象徴である帯を結んだという出来事をも想起させるものである。

右側の場面では、背景に柱廊があり、その半円の向こうに都市の風景が見える。そして中央には、赤い衣を着た人物が階段を下りてくる姿が描かれている。前景の登場人物たちの正確な同定はより複雑である。子どもに襲いかかっている小犬は、通常、幼い純潔を脅かす悪魔の具現化とされる。修道服を纏い、腰にロザリオを吊るした女性は、おそらく教会の擬人像であり、階段を下りる男性は、その夫であるキリストを象徴していると考えられる。彼の赤い服はキリストの受難を想起させ、またその立ち位置は、楣石の中央にある嘆きのキリスト像の真上に位置している。この文脈では、聖ヴィクトルのウーゴユーグ・ド・サン・ヴィクトールによる寓意的著作に基づき、子どもはキリストとその花嫁(教会)との結合から生まれた聖職者階級及び聖職者そのものの象徴であると解釈される。
右側の人物はイスラム教徒のような衣装を身に着けており、彼に向かって黄色い服を着た後ろ向きの男が、教会を象徴する女性を指し示している。その様子から、彼を改宗させようとしているように見える。また、背景に描かれたもう1人の女性は、システィーナ礼拝堂におけるボッティチェッリの「キリストの試練」の中に登場するシナゴーグの擬人像と同様に、ユダヤ教会の象徴的表現である可能性がある。
下の楣石には、枢機卿の関心や教会での役職を示す様々なものが並んでいる。
胴蛇腹には、カラーファ家の紋章を支える天使たちが描かれている。
別表記
Miracle of the Crucified Christ Praising St. Thomas
題材
外部リンク
異端に対するトマス・アクイナスの勝利 Trionfo di San Tommaso d'Aquino sull'Eresia
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ
- 制作
- 1488~1493年
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂カラーファ礼拝堂
概要
「異端に対するトマス・アクイナスの勝利」は、フィリッピーノ・リッピ作の絵画、壁画。

別表記
Triumph of St. Thomas Aquinas over Heresy
題材
外部リンク
マルス神殿から竜を追い出す聖ピリポ San Filippo scaccia il drago dal tempio di Marte
- 作者
- フィリッピーノ・リッピ
- 制作
- 1497~1502年頃
- 媒材
- フレスコ
- 所蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会フィリッポ・ストロッツィ礼拝堂
概要
「マルス神殿から竜を追い出す聖ピリポ」は、フィリッピーノ・リッピ作の絵画。

関連項目
『イコノロジー研究』
外部リンク
サルヴァスタイル美術館
Web Gallery of Art
参考文献
『イコノロジー研究』
外部リンク
ウィキペディア
Art cyclopedia
Treccani.it
参考文献
『メディチ家』
『読む年表・年譜 ルネサンス・フィレンツェ、イタリア、ヨーロッパ』
『ロレンツォ・デ・メディチ暗殺』
『Lucretia Borgia』
記載日
2005年5月29日以前
更新日
2025年3月16日